どんな人にも生きる意味があると説かれた親鸞の教えとは

仏教に説かれる「業力不滅」とは何か。運命を引き起こすもの

2020/11/19
 
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菊谷隆太
こんにちは、菊谷隆太です。 東京、大阪、名古屋を中心に仏教講座を主催する仏教講師です。 専門は浄土真宗で、「教行信証」「歎異抄」を学び、皆さんにもお伝えしています。 このサイトは「どんな人にでも生きる意味がある」と宣言された親鸞という方の教えを知っていただきたいと思い、開設いたしました。

『業力(ごうりき)』という言葉があります。
『業』は普通は(ぎょう)と読むところですが、仏教では(ごう)と読みます。
「業の深い人だ」とか、「業な話だねえ。」と使われたりします。
インドの言葉では「カルマ」といいます。
お釈迦様はインドの方ですから、サンスクリット語で「カルマ」、これを中国で「業(ごう)」と訳されました。
日本の言葉では「行為」のことです。
この業には運命を引き起こす力があると釈迦は説かれました。
これを「業力」といいます。
今回は「業力」とは何か、お話ししてまいります。

 

運命は業力によって引き起こされる

 

六本木にて管理職で働いておられる女性が勉強会に来られ、終了後に話されたことが心に残りましたので、ご紹介します。
その方の部下で、相手の気持ちを逆なでするような、無神経な言動をとる女性があり、困っているとのことでした。
同僚からは嫌われてしまい、職場の人間関係もうまくいかず、飲み会にも誘われません。
相手に腹を立てさせる言動が同僚だけでなく、上司である自分にも、お客様にもそういう態度が出ますので、とても大事な仕事は任せられない、とのことでした。
するとその女性も、自分が認められないことからひがんでしまっているそうです。

 

そこで先日少しでも気付いて欲しいと食事に誘って、話を聞いたりしたそうですが、なんでもその彼女は風水に凝っていて、今の職場も部屋も、自分に合わないから悪い霊気が入ってくる、それで仕事も人間関係もうまくいかない、と思っていたのです。
その運勢、悪い霊気を和らげるにはどうしたらいいか、と週末はパワースポットに行ったり、高額で買ったパワーストーンを職場の引き出しに入れていたというのです。
「いや、それは違うでしょ?上手くいかないのは、あなたの日々の言動なのよ」とわかってほしかったそうですが、できなかった、と言われていました。

 

仏教では、私の運命を決めるのは『行為』である、と一貫して説き明かします。
『行為』とは、仏教の言葉で『業(ごう)』といい、インドの言葉でカルマといいます。
この業によって運命が引き起こされるのだ、と説かれます。
この業、カルマには力があり、これを『業力』といいます。
業力とは、我々の運命を引き起こす力、です。
パワースポットとは、運命を引き起こすパワーがスボット(場所)にあると信じているのですし、パワーストーンなら、運命を引き起こす力がストーン(石)にあると信じているのですが、お釈迦様は、スポット(場所)にも、ストーン(石)にも運命を引き起こす力はありませんよ、運命が引き起こされるのは、『業』日々の行為によるんですよ、と一貫して教えていかれました。

 

この部下の女性も、業力を受け止め、
「自分のどんな言葉が人を怒らせてしまうのだろうか」
「どうすれば、この言動を正せるようになるだろうか」
と、己に目が向いた時、自分の周りを取り巻く劇的な変化に感動することでしょう。

 

一目惚れは業力による

 

「この人を好きになってはいけない」が恋の始まり、「この人を好きにならないといけない」は恋の終わり、といわれます。
人を好きになるのは、理屈ではありません。
「私の年収はこれこれで、年齢や社会的魅力から判断すると、同僚のA子さんにプロポーズするのが最適だ」と頭の中で分析、計算してから、「うお~!A子さんが好きだ~!」と熱を上げる人はいません。

 

理性は恋の衝動の後に動きます。
「ああ、ステキな人だ!」とまず雷の一撃があり、その後で遅ればせながら理性が活動を始めて「でも、どうやって彼女に近づけば…」と作戦を練るのです。

 

計算ではどうしても好きになってはいけない人、理性的に判断すれば遠ざけなければならない人であっても惹かれてしまい、自分で自分の気持ちがどうにもできない時もあります。
この理屈や計算ではどうにもならない、恋の衝動はどこから起きるのでしょうか。

 

私たちが過去にしたさまざまな行いが「業力」となって、特定の「その人」を好きになってしまうのです。
それは理屈や理性では抑えきれない、ものすごい強い力であり、釈迦が「業力は大象百頭よりも強い」と説かれているのは、そのことです。
当時インドで一番力の強い象を引き合いに出され、大きなゾウ100頭後からよりも強いのが業力だと仰り、誰も止められない、といわれています。

 

「こうして、こうなれば、こうなると分かりつつ、こうなった二人」という言葉もあります。
不倫でせっかく積み上げてきたものを棒にする人は後を絶たず、やがてこうなるとわかりながら、なんでやめられなかったのかと思いますが、何者も妨げることができない強い業力に動かされているのだから、どうにもならないことなのでしょう。

 

業力不滅で阿頼耶識に収まる

 

『業力不滅』という言葉があります。
私たちの業(行為)は、不滅の業力となって、阿頼耶識(あらやしき)という心の蔵の中に納まっていると釈迦は説かれました。
ちょうどたとえるならば、裏サイトに匿名であることをいいことに、個人や会社の中傷をしたり、愚痴のハケ口になることがありますが、どれだけドロドロした非難や愚痴を書き連ねても最後電源を落とせば「オレがこんなことを書いたことは誰も知るまい」と思います。
しかしパソコンの中に、ハードディスクがあって、そこには入力された情報が残っています。
よってある操作をすれば「あなたは、何時何分、こういうことを書いただろう」と動かぬ証拠が画面にあらわれます。あるいは、「こんな画像みてただろう」と、あらわになります。

 

誰も見ていないところで、誰も知らないだろうと思ってパソコンに打ち込んだ内容が、すべてハードディスクに記録されていて、ある操作(縁)に触れれば、目に見える結果となってあらわれる。
ちょうどそのように私たちが誰も見ていないところでやっている行動や誰も知らない心の動きは、すべて自己の阿頼耶識に日々記録され、縁に触れると己の運命を引き起こすと、お釈迦様は説かれています。

 

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