どんな人にも生きる意味があると説かれた親鸞の教えとは

良識も常識も時代や場所でころころ異なる「空言・たわごと・真実あることなし」

 
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菊谷隆太
こんにちは、菊谷隆太です。 東京、大阪、名古屋を中心に仏教講座を主催する仏教講師です。 専門は浄土真宗で、「教行信証」「歎異抄」を学び、皆さんにもお伝えしています。 このサイトは「どんな人にでも生きる意味がある」と宣言された親鸞という方の教えを知っていただきたいと思い、開設いたしました。

親鸞聖人は「私たちの住む世界はすべてのこと例外なく空言・たわごとであり、真実(まこと)は一つもない」と説かれています。
これは常識だ、自明のことだと皆言うことでも、親鸞聖人は「空言だ」と一蹴されます。
今回は時代や場所によってころころ変わる人間の常識、思想について様々な例を出してお話ししてまいります。

 

大前提の常識が実は空言・たわごとだったりする

 

「Aは正しい」と主張する人に「なぜそう言えるのか。根拠は?」と返すと「Aは正しい、とBに書いてあるのが根拠だ」とBを提示してくる。
そこで「なぜそのBという根拠が正しいといえるのか」と返すと、「えっ!これが正しいのは常識だろ!?」と心外そうに言ってくる。
こんなやりとりはよくありますが、その人が常識と信じているBが正しいとは限らないから、Aが正しいとは言えないのです。

 

常識とは大多数の人が正しいと信じているものですが、その時代、その国の常識は、違う時代、違う国では常識ではなくなります。
アインシュタインの相対性理論は、人がどこにいるかによって時間は伸び縮みするとか、物体は速度が上がると重くなってくるとか、常識で考えたらわけ分からん理論ですが、その理論が応用され、原子力や人工衛星のGPSなど、私たちの生活に活かされています。

『常識とは十八歳までに身につけた偏見のコレクションのことをいう』(アインシュタイン)

世の常識は彼のような天才の出現でひっくりかえってしまう、あてにならないものなのです。

 

人が何かを主張する時、それが正しいとする根拠があってそう主張するのですが、その根拠と呼ぶそれも、さらに「それが正しいと言えるのはなぜか」と根拠を問い続けると、やがては「常識だから」という土台に行き着きます。
その人間の常識があてにならないから、真実を究明するのは至難なのです。

 

こんな考えさせられる寓話(ぐうわ)があります。
遠い異国での村の話。
その国には海辺の丘の上に砲台がありました。
毎日きっかり正午に号砲が鳴り、誰もがそれで時間を合わせるのが国民の慣わしになっていました。

あるとき、一人の少年が、ふと疑問を抱いて、丘の砲兵に尋ねました。
「号砲を鳴らす時、どうして毎日ちょうど今が正午だとわかるんですか」
砲兵は精巧な懐中時計を胸ポケットから取り出し、誇らしげに少年に見せて言いました。
「国で一番正確な時計を持っているからだよ。その時計の時間がいつもちゃんと合っているように管理することも、オレの仕事なんだ」
「じゃあ、この時計はどうやって合わせるんですか?」と少年がさらに問うと、「おれは週に一度、必ず国会議事堂の時計塔の前を通る。そこでこの時計を合わせるんだから間違いないさ」

そこで次の日、少年は国会議事堂の時計塔を訪れ「時計塔の時間は、どうやって合わせているんですか?」と尋ねました。
役人は「そりゃあ、このあたりの誰もが使ってきた一番確かな方法だよ。正午の号砲で合わせるのさ!」

 

根拠のない常識がまかり通っていた時代

 

今の子供たちは部活動でも「熱中症には気をつけよう」「こまめに水分を取ろう」と呼びかけられますが、私の高校時代の部活動は「練習中、水分を取ってはいけない」とのルールがあり、このために、特にこの夏の時期、大変苦しまされました。
炎天下、「ファイトファイト~」と声を枯らすまで声を出し、シャツが汗でびっしょりになっても休憩までは水が飲めない、私も目がチカチカしてふらっと倒れたことが一回ありますが、どの部員もそんな経験の一度か二度あり、これは今なら熱中症の症状と言えるのではないかと思います。

 

なぜ水を飲んではいけないかというと、これも今から思うと何の根拠もない話なのですが、水を飲むと疲れやすくなるから、という理由でした。
気持ち悪くなったり倒れたりするのは、根性がないから、体力がないからだと言われました。
自分も倒れる者を見てそう思いましたし、みなそう思われたり、言われたりするのが嫌で、水が飲みたいとも、気持ち悪いとも言い出せず、休憩が来るまでじっと我慢したものです。
今からするとPTAでも問題視されそうな指導法ですが、当時(1980年代)は私のような部活動経験をされている方は珍しくないと思います。

 

「あれだけ苦しかったことが意味のないやり方だったのか」と今にして思いますが、腹が立つほどでもありません。
それはもう終わったことですし、高校の部活動程度のことですし、ある意味根性を鍛えさせてもらったことが後の人生に役立ったので、あれはあれで青春の思い出の一つと受け止めています。
でもこれは当時の「水飲むなルール」が今の私にさしたる害を与えていないので、こんなのんきなことがいえることであって、熱中症で人生に大きな悪影響を与えるような事故に遭った当事者には、当時の理不尽な指導法に強い怒りを覚えることでしょう。

 

旧日本軍は「上官の命は朕の命」と絶対服従が強いられていました。
どこにでも底意地の悪い人はいるように、当時もそんな上官もいたようで、そんな上官の下での軍隊生活は悲惨でした。
「体罰」と称したいじめは常態化し、その暴力で命を落とす者、トイレで自殺する者、逃亡する者もありましたが、なにしろ「命は羽毛よりも軽しと覚悟せよ」と厳命されていた時代、不当を訴えるなど誰にもできませんでした。
今のパワハラなんてものではありません。
現代ならブラック企業を訴訟することもできますし、離職することもできますが、当時は逃げたら銃殺刑、直訴も銃殺覚悟の行為でした。

 

どこの国でも戦時中はこうした憤りを禁じ得ない出来事があったでしょうし、今だって世界にはそんな国もあります。
時代が変わると、あるいは国が変わると、今までよかれと信じられてきたことが悪いこととされ、悪いことだと言われたことがよいことだと評価されます。
その都度人は振り回され、やがて裏切られ「あれだけ一生懸命耐え忍んできたことは何だったんだろう」と虚無感にかられる存在なのだと思います。

 

今日の常識、よいことと思われている事柄の中にも、十年後には「なんと意味のないことをしてきたのか」「なんと危険なことが平気でなされていたのか」と世の人からあきれられることもきっとあるのでしょうね。

 

善悪の判断も空言たわごとか

 

親も、教師も、政治家も、聖職者も口をそろえて「悪人になってはいけませんよ。善人になりなさいよ」と教えます。
ところが問題は、その主張の前提となるべき善悪の基準が、その人その人の主義主張、イデオロギーによって大きく変わる、ということです。

 

第二次大戦時のこと。
イギリスはナチスドイツの暗号の解読に成功し、ドイツ空軍がコベントリーという25万人の住む都市を11月14日に空襲するとの情報を得ました。
さっそくその情報はチャーチル首相に伝えられましたが、彼はこの情報を無視します。
コベントリーは無防備のまま空襲を受け、街は壊滅的な被害を受けました。
このときチャーチルは、コベントリーを失うことよりも、イギリスの暗号解読能力をナチスに知られることを恐れたのです。

 

敵を欺き勝利を得るためにチャーチルがした難しい政治的決断を、後に彼自身が『第2次世界大戦回顧録』で告白しました。
『回顧録』はノーベル文学賞を受賞し、思慮深き勇断であった、と評価されています。
しかし25万の同朋を見殺しにしたことに違いはなく、コベントリーの市民は今もその時の空襲を忘れてはならない、と壊れた町の一部を今に遺しています。

 

旧ソ連時代、ときの首相スターリンは、スターリングラードに殺到するドイツの大群を前にソ連軍60万を素手で突撃させ、非道な最期を強いました。
食糧難と弾丸の消費を図るためだったといいます。
やがて対ナチスの戦争に勝利したスターリンは第二次大戦の英雄として確固たる地位を築きましたが、60万の自国民を殺したのは明白です。

 

1人殺せば殺人者、5人殺せば殺人鬼、100万人殺せば征服者、全人類を殺したら神。

 

これでは「悪人になってはいけませんよ。善人になりなさいよ」の言葉も空々しく聞こえてきます。
親鸞聖人は「萬のこと・皆もって、空言・たわごと・真実あることなし」と言われています。

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